取調べ
1階の案内図を見ると、刑事課は2階にある。数週間前に、梅林警察署の長崎と名乗る刑事から電話が入り、少し、話を聞きたいことがあるというのだ。警察署に来てくれというので、スケジュールを調整、そして、今日がその日である。
警察署からの電話番号は末尾3ケタが110になっているからスマホの着信を見たとき、なんだ?警察からと思いながらも電話を受けた。思い当たることはあったが、それは昨年、民事事件として和解金を支払い解決していたから別件だろうかと考えた。
しかし、要件を聞くと解決したはずの事件について話を聞きたいというのだ。刑事の話し方は、気味が悪いほど丁寧で下手で話してくる。これが刑事の話し方なのか、話し方を訓練するのだろうか。と別の思考をしながら刑事の話を聞く。
当然、「その件は地方裁判所の判決で解決しているんですけど」と伝えると、民事事件と刑事事件は違うのでと、ドラマで見る決まり文句である。法律に無知である一般人からするとそうなのかと理解するしかない。
警察署は古く、暗い通路を通り2階に向かう。通路の片隅では弁当が売っていた。刑事に会う前にトイレにいく。トイレには古いアサガオが並んでいて黄ばんでいる。用を済ませて2階であがる。刑事課の入り口で呼び鈴をならし、名前をつげて長崎刑事をよびだした。
小さな部屋に案内される「取調室」とある。狭い。部屋に入ると、片隅に小さな一人掛けの机、そして別に二人掛けの机がある。4人はいるのが精いっぱいだ。カバンは、小さな一人掛けの机の上に置くように言われ、さらに携帯やスマホをもっているのであれば録音できないと告げられた。
あらためて、椅子に座り、要件を聞くがはっきりとは説明をしないが、相手から相談を受けて今日にいたったという。そして、これから行われることは取調であるとわかった。詳細を聞く。調書を作成して検察庁へ送るという。私は被疑者なのだ。
約1時間半にわたり話を聞かれる。そして、今日の記録ということで住所、氏名、連絡先を書く。そして驚いたことに、拇印。つまり私の右手人差し指に黒いインクをつけて、書類の末尾に押印した。