㉒押印
私は印鑑を押すか。押すのを止めるか迷っている。
実はこういうことだ。押印すべきか迷っている書類は、離婚届けだ。夫とは約40年間連れ添ってきた。今は子どもたちも巣立ち二人きりの生活になった。これまでそれなりの生活をしてきた。大きな不満はなかったが、心にはずーっともやもやしたものがあった。「このままで人生を終わっていいものか」と。
夫に「私たち離婚しましょう」と意を決して告げた。夫には青天の霹靂。なんてことを言うんだという顔をしてショックを受けたようだ。何度か話合いをした。離婚しなくても自分のやりたいことは出来るのではないかとも考える。生活のことを考えると当然に心配になる。住まいのこと、お金のこと、病気になったらどうしようと。マイナスなことばかりが浮かんでくる。
今日中に押印をしようと決めた。自分で決断し、夫にも話をしていざ離婚届けに押印をしようとなると踏み切れない自分がいる。しかし、涙は出そうだが、そうとはならない。
いよいよ決断の時だ。署名し印鑑を朱肉につけ押印する。夫からはすでに署名と押印はもらっている。明日は区役所に提出にいく。
よし、あたらしい生活をはじめよう。目の前が明るくなったように感じた。